草月×日本茜プロジェクト

創流100周年に向け、家元が掲げたテーマのひとつ「植物の成長」。その想いは、家元と同じ名を持つ希少な染料植物「日本茜」との運命的な出会いを引き寄せました。
舞台は、京都・美山。一般社団法人日本茜伝承プロジェクトの協力のもと、私たちは一枚の放棄農地を切り拓き、2024年1月の種まきから2年の歳月をかけて、日本茜を大切に育んできました。
創流祭では、この大地が育んだ日本茜で染め上げた衣装を家元が纏い、特別なパフォーマンスを披露します。

日本茜とは

家元と同じ名前をもつこの植物は本州、四国、九州などの山野に自生するアカネ科の蔓性多年草。日本古来の在来種で、万葉集の歌にも詠まれるほど歴史の深い染料植物です。ハート型の葉と細かな刺(とげ)を持つこの植物は、土の中で数年かけて蓄えた根から、透明感のある鮮やかな緋色を生み出します。

茜には大きく分けて「セイヨウアカネ」「インドアカネ」「日本茜」の3種類あり、市場に流通しているものの多くは外国産です。それらは染料店で容易に入手できますが、在来種である「日本茜」は極めて希少な存在。今日では「幻の赤」と呼ばれるほどになっています。

ご協力いただいた「一般社団法人日本茜伝承プロジェクト」について

美山にある日本茜の畑にて、家元と一般社団法人日本茜伝承プロジェクトの皆さん。左から渡部康子さん、家元、平岩歩海さん(渡部さんの娘)、小川靖絵さん。

「一般社団法人日本茜伝承プロジェクト」は、かつて日本各地に自生しながらも、今では「幻」と言われるようになった染料植物「日本茜(にほんあかね)」を復活させ、次世代へ繋ぐため活動しています。

京都・美山の豊かな自然の中で、代表の渡部康子さんを中心に、耕作放棄地の再生を兼ねた日本茜の栽培に取り組み、活動の幅は染料の生産に留まらず、伝統工芸士と連携した衣装の復元、さらには現代の暮らしに馴染む「植物顔料」の開発など、多岐にわたります。

「里山というランドスケープは、大きないけばなである」と語る渡部さん。植物を愛で、その命を活かす「いけばな」の精神と深く共鳴しながら、土壌を守り、日本の伝統的な色彩文化を支えるサステナブルな未来を創造しています。

 

草月×日本茜プロジェクト《活動の軌跡》

 

2024年1月:種まき

種まきは一般社団法人日本茜伝承プロジェクトの皆さまが活動されている京都府南丹市美山町の「美し山の草木舎」で行われました。3〜4ミリほどの黒い果肉のような粒を指でつぶして、中に入っている小さな固い種を取り出します。そして培養土が敷き詰められた容器にその種を植えていきます。

2024年5月:成長した苗の植えつけ

一般社団法人日本茜伝承プロジェクトの皆さまのご協力のもと、1月にまいた種は無事に発芽し、その成長した苗を植える作業を行いました。
「美し山の草木舎」の隣の土地を借りて作った草月流の日本茜の畑。長らく使用されていなかったこの固い大地をスコップやくわを使って掘り起こし、柔らかくなった土から雑草や小石、植物の根などをを取り除きながら畝(うね)を作ります。
できあがった畝にマルチシートを敷いて穴をあけ、苗を植えていき、たっぷり水をあげました。

2024年8月:雑草とり

日本茜は蔓性の植物。成長する葉が太陽に向かってぐんぐん伸びるようネットを張ります。
そして畑の周りの雑草やマルチシートのあけた穴から日本茜と一緒に生えてきた雑草を取り除き、日本茜の成長を見守ります。

2024年10月〜2025年10月

日本茜は少しずつ上に伸びていき、この1年間で、たくさんの方のご協力のもと大きく成長してくれました。
そして雑草を取り除く作業だけでなく、時には茜染めを体験して日本茜について学びを深めました。

2024年の日本茜のようす。
2025年の日本茜のようす。
「美し山の草木舎」で茜染めを体験。

2025年12月:日本茜の根を収穫

種まきからおよそ2年間、日本茜は大きく成長し収穫の冬を迎えました。
苗を植えるときに作った畝(うね)を周囲から柔らかくほぐして、根を引きちぎらないように大切にゆっくりと掘り起こします。しっかりと根付いた日本茜の根のオレンジ色や赤色に感動です。

日本茜の根。

創流祭の衣装へ

創流祭では、家元が「和装」と「洋装」の二つの日本茜スタイル披露します。

「和装」は寺田豊氏が、「洋装」は山本寛斎事務所の高谷健太氏が手がけます

左から山本寛斎事務所の高谷健太さん、家元、寺田豊さん。

和装:寺田 豊(てらだ ゆたか)さんについて
一般社団法人日本茜伝承プロジェクト 共同代表 / 「京絞り寺田」主宰
1813年創業の歴史を持つ老舗の四代目。日本茜や日本紫といった日本原種の植物染料を用いた着物製作の第一人者として知られる。
草月流とは、1995年に先代・宏家元より創作着物「草に月」などの制作を依頼されて以来の深い繋がりを持つ。創流100周年に向け、二年の歳月をかけて育てた日本茜を、卓越した絞り染めの技法で現代の美へと描き出す。
 


洋装:高谷 健太(たかや けんた)さんについて
山本寛斎事務所 代表取締役 / デザイナー・クリエイティブディレクター
師である山本寛斎氏とともに、国内外のファッション、イベント、地方創生など多岐にわたるプロジェクトを牽引。2021年には渋谷スクランブル交差点をランウェイにするなど、ジャンルを超えた革新的なクリエイションで注目を集める。
草月流とは、山本寛斎氏が主宰した「日本元気プロジェクト」等において、2019年まで複数回にわたり舞台装飾を共作した深い縁を持つ。

 

草月×日本茜プロジェクトは次なるステージへ

世界が注目する「GREEN×EXPO 2027」への挑戦
草月×日本茜プロジェクトの結実は、創流祭の舞台に留まりません。私たちは、2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」にて、このプロジェクトの集大成となる大規模なインスタレーション展示を目指しています。

京都・美山の放棄農地を切り拓き、種から育てた日本茜。その「命のリレー」を、今度は世界中から人々が集う国際的な舞台へと繋ぎます。失われつつあった日本古来の色彩を、植物の生命力と草月流の造形美によって現代のアートへと昇華させ、地球環境と文化の共生という新たなメッセージを世界へ発信します。

 

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